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[日経デジタルより]

 外国為替市場でここ1カ月ほど円安基調が続いている。
10月中旬には2カ月半ぶりに1ドル=104円台後半に下落する局面もあった。
6月に英国の欧州連合(EU)離脱が決まる直前に一時100円を突破したころとは空気が変わったとの声も聞く。
しかし、実際には最近の円安は投機筋の持ち高調整の結果にすぎない。
遠からず売り圧力は後退しそうで、むしろ「100円突破の第2波」が襲ってくるリスクに警戒を解けない。

 

■投機筋の持ち高調整にすぎない

 最近の円売り材料となっているのは米国の年内利上げ観測だとされている。
13日に104円台後半に下落したのも、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、委員が「利上げ条件が整いつつある」という点でおおむね一致したことが確認できたためだ。
円安が持続的なものになるためには「米景気が2017年にかけて堅調さを増し、複数回の利上げの期待がしっかりと醸成されることが必要」との見方が多い。
そうした段階にはまだ至っていない。

■円高圧力生む「ABCDファクター」


まず、Aはアメリカ(America)。
円安の流れが持続的なものになるには、米経済の堅調さが確認され、複数回の利上げを市場がしっかりと織り込む必要がありそうだ。
だが、ドル高が米経済に及ぼしている引き締め効果などから、実際の利上げは今年から来年にかけて1回程度にとどまる公算が大きいとみる。
そして「米景気の不透明感が残るようなら、円相場は再び90円台に向かうだろう」(ドイツ証券の田中氏)という。


米国の大統領選挙は民主党のヒラリー・クリントン前国務長官が優位を保った形で投票まで約2週間となった。
ただ、どちらの候補が勝っても、次期米政権は保護主義的なスタンスを取る可能性がある。
ドル高が国内経済に及ぼす悪影響にも注意を払いそうで、円安に寛容にならないだろう。
日本側が円売り介入を手掛けにくい状況も続くだろう。


次にB。実は日銀(Bank of Japan)である。
9月に決めた新政策(長短金利操作付き量的・質的緩和)について「中長期的な円高リスクを高める」(JPモルガン・チェース銀行の棚瀬氏)との受け止め方が市場にある。
 

3つめのファクターであるC。
中国(China)など新興国の経済減速は、引き続き市場にリスクオフ(リスク回避)ムードを広げる要因であり続ける。
「安全通貨」と目される円の買い材料になり得るわけだ。

最後に、ドイツ銀行(Deutsche Bank)の経営問題など欧州の金融不安もリスクオフ要因であり続けている。
これが4つ目の要素であるDだ。
やっかいなのは、欧州発金融不安は、日本の株式市場でも銀行株の売り材料になりがちなこと。
そうすると、日銀のマイナス金利の「深掘り」がやりにくくなる。
マイナス金利政策は銀行の収益にマイナスとの見方が多く、銀行株の下落に拍車をかけかねないからだ。
結果的に金融政策面での円高防止も難しくなる。
BとDの2つのファクターは密接な関係にある点に注意が必要だ。