【朝日新聞デジタルより抜粋】
トランプ氏対クリントン氏の「醜聞合戦」の底流にあるのは、米国内で強まりつつある孤立主義。なぜそうなっているのか。
米国は、どこに向かおうとしているのか。
「フォーリン・アフェアーズ」を発行することでも知られる米有力シンクタンク、外交問題評議会(CFR)のリチャード・ハース会長に聞きました。
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11月8日の米大統領選が、間近に迫った。トランプ氏対クリントン氏の「醜聞合戦」の底流にあるのは、米国内で強まりつつある孤立主義である。なぜそうなっているのか。米国は、どこに向かおうとしているのか。米有力シンクタンク、外交問題評議会(CFR)のリチャード・ハース会長に聞いた。


 ――トランプ氏のわログイン前の続きいせつ発言など、大統領選は醜悪な様相です。


 「懸念しています。米国のイメージにかかわります。個別の政策に異論はあっても、米国が他国から尊敬される国であってほしいと思います。それが、米国の影響力の一つの形だからです。また他国、とりわけ日本のような同盟国は米国を頼りにしていますが、米国が予測不可能になると頼ることがとても難しくなります」


 「環太平洋経済連携協定(TPP)を批准できておらず、インフラや移民制度も近代化できず、財政赤字問題も処理できない。これらの事実も、米国の信頼性への疑問につながっています。米国政治の機能不全の深まりと、北朝鮮や中国の問題など世界中で難しい問題が同時に生じていること。非常に心配な組み合わせです」


 ――トランプ氏は、共和党候補の討論会で、あなたを尊敬していると発言しました。しかし、トランプ氏はあなたの助言を聞いているようには見えません。トランプ政権になったとして、重要ポストを提示されたら、受けますか?


 「民主、共和の全ての候補者に手紙を書きました。外交問題評議会での講演依頼と、ご希望ならブリーフィングもする、と。トランプ氏は講演はしませんでしたが、ブリーフィングの依頼はあり、昨夏に1時間ほど話しました」


 「トランプ氏が勝っても、クリントン氏が勝っても、話がしたいと言われたら話します。もし、政権で働くことに興味があるかと聞かれたら、世界観や、米国の立ち位置、政策の優先順位について、似たような見解を持っている場合のみ、政権に入ると思います」


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 ――なぜ、「孤立主義の誘惑」が強まっているのでしょうか。


 「イラク・アフガニスタン戦争では、200万人以上のアメリカ人が動員されました。多数の人命が犠牲になり膨大な費用がかかったにもかかわらず、その成果が見えません。米国が失ったものと、得たものの間には、巨大な不均衡があります。また、(世界金融危機の起きた)2008年以降、経済的な難局が続いています。正規雇用者の割合は、08年以前の水準に戻っていません」


 「しかし、米国は、戦後、自らが成し遂げたことから、多くの利益も得てきたのです。日本や韓国との関係もそうですし、冷戦下や冷戦後も欧州への支援や協力関係は、米国にとってもプラスでした。世界との関与を減らすことで、米国が何を失うのか、それを説明できていないのは問題です。子供たちは学校でもあまり教えられておらず、世界の出来事と米国とのつながりを理解できない新しい世代が増えています」



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 ――中低所得者層の怒りが、孤立主義への支持につながっていると思います。国際主義に関する国内の支持を築くために、米国は経済的不平等の問題に取り組む必要があるのでは。


 「米国人は、経済的な懸念があると、国際的な関与がそれを加速させていると批判する傾向があります。しかし、それは逆に階層間の闘争の増大を導くでしょう」


 「社会には、常に不平等が存在してきました。階層が固定されず流動化していれば良いのですが、ここ10年か20年、多くの米国人は上の階層に行くのが難しいと感じています。それゆえ、大きな憤りを感じ、保護主義、孤立主義的傾向が強まっているのです。必要なのは、階層を上れることを、現実化することです。そのためには、米国人が受けられる教育や職業訓練の質の向上が重要です」


 ――トランプ氏は日本が在日米軍の駐留経費をもっと払うべきだと主張しています。日本の安全保障政策をどうみていますか。


 「日本の安全保障政策で最も重要なのは、日米が緊密な関係を維持することです。日米同盟が基盤です。そして、日本が安全保障上の能力を発展させ、もう少し地域的、国際的な役割を拡大できるよう、国内で政治的な合意ができれば望ましいと思います」


 「日本が米軍の駐留経費の負担を少し増やせるのなら、それは歓迎ですが、より重要だと思うのは、日本の国際的な役割の増大だと思います」
 


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