産経ニュース / 2017年3月29日

【ロンドン=岡部伸】
英国内では欧州連合(EU)離脱に関して「主権」を取り戻せると歓迎する声が上がる一方、欧州での孤立を懸念する声も出ている。東欧出身の在英EU市民の間からは、先行き不安を口にする声が聞かれた。


 「離脱」を支持するロンドン近郊の貿易会社経営者アーネスト・マクドナルドさん(68)は、「英国が1973年に欧州共同体(EC)に加盟した際、巨大な市場への参入が目的だったが、徐々に国家としての主権が奪われ、今や選挙を経ない官僚が管理するEUの『地域』になった」と指摘。

その上で、「離脱でもう一度、法を作れる主権を取り戻せる」と期待感を表明した。


 これに対し、「残留」を希望する南部ソールズベリーの会社員、スティーブ・サマーズさん(51)は「離脱によって英国は欧州で孤立する。EU離脱は英国史上最悪の決断だ」と語った。


 一方、ブルガリア移民同士のビジネス交流団体を創設したストルーマン・パウノフさん(51)は、先行きの見えない離脱交渉に言及。「政治は政治、ビジネスはビジネスで続けるしかない」と言葉少なに語った。


 スロバキア出身で金融ITエンジニアのヨゼフ・セベスチェンさん(38)は、「2006年に渡英して金融業界で働いてきたが、ポンドが弱く悪くなる一方だ。

金融は欧州大陸へ拠点を移す可能性がある」と指摘。

また、「欧州大陸出身者には居住ビザの心配がある。何とかしてほしい」と訴えた。


 歴史的建造物管理の仕事に携わるポーランド人のパヴェル・ニエヴスキーさん(38)は、ポーランドがEU加盟と同時に渡英してから12年が経つ。

「6年前に子供が生まれて英国籍を取得し、両親のわわわれも永住権を取得したので離脱の影響はない」と語る一方、「(私たちへの)差別も少なくなく、将来、英経済が悪化すれば、大陸に戻ることもあり得る」と不安げな表情を見せた。


イギリスのEU離脱と為替への影響

イギリス財務省が公表した試算によれば、仮にブレグジットとなった場合の国内総生産(GDP)は残留した場合と比べて2030年までに3.4%から9.5%の低下とされ、イギリス国民の生活に大きな悪影響があることは確実と言えます。

また、ブレグジットによってEU非加盟国となれば、イギリスの主な貿易対象となるEUとの貿易に重い関税負担が生じることとなります。


TPPをはじめとするメガFTA(自由貿易協定)が主流になりつつある現在、EUから離脱したイギリスが単独で各国とメガFTAを締結することは事実上不可能であり、EU加盟時と同様の経済効率を追求することは難しく、当然、経済規模の縮小は避けられません。


ブレグジットによってEUに生じるもっとも影響としては、域内第2位の経済力を持ち、強い軍事力を誇るイギリスを失うことでEUの自信や国際的な立場に、大打撃となります。

EUの国際的な立場が悪化すれば、様々な場面での影響力の低下や、グローバル経済から後退する可能性が大きくなるのです。


イギリスは独仏に次ぐ第3位の出資国であり、2010年から2014年のEU予算では差し引きで平均年間92億3千万ユーロを負担しているため、その穴埋めはEUにとっても致命的と言われています。


イギリスが離脱した場合に生じる予算の不足分は、経済的に弱い地域や農業従事者への補助金が穴埋めに充てられ、補助金の恩恵を受けていた分野の競争力が弱まることが予想されます。


このようにブレグジットによる様々な影響を織り込み、外国為替市場は特に英ポンドを中心に大きく動揺しています。


2015年夏には1ポンド = 190円を超えていたポンド円の為替レートは150円から160円台に下落し、ポンドドルでも1ポンド = 1.4ドル台と、2010年以来の安値水準に落ちこみ、国民投票の実施前にも関わらず外国為替市場では相当程度ブレグジットが織り込まれていることがうかがえます。


外国為替市場が大きく変動することが予想されるので、その動向には注意が必要と言えるでしょう。


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