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2018年8月27日 より

コラム:リスクオフの円高にブレーキをかける4つの要因


[東京 27日] - 最近、「円は今でもファンディング(調達=売り)通貨としての機能を維持しているのか」、との質問を受けることが多い。昨今の新興国通貨下落、米中貿易摩擦を巡る混乱などを背景に、市場のリスクオフ度合いが高まっても、ドル円相場の下落が限定的となり、底堅い印象を受けるからだ。

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そもそも、リスクオン時の典型的な為替相場の動きとして、資金の出どころである円やドルが両通貨とも弱くなる傾向がある。
これは日本も米国も投資家が保有する資金が多く、リスクテークに対する姿勢が強まった場合に、国境を越える投資フローが増え、両国の通貨が売られやすくなるためと考えられる。

また、円の場合には金利が低いこともあって、海外の投資家がファンディング通貨として円を売って、高金利通貨を買うという取引、いわゆるキャリートレードを行うこともある。
この結果、リスクオンの際には弱いドルよりも円の方がさらに弱くなることが多い。
従って、ドル円相場は上昇する。

一方、そうした資本フローの巻き戻し(ポジションの手じまい)につながるリスクオフの環境では、ドルと円の双方が買い戻され、両通貨が強くなるが、上記とは逆に強いドルよりも円の方がさらに強くなるため、ドル円は下落することになる。

では実際、リスクオフになっても円が買い戻されなくなるという傾向は出始めているのだろうか。

円の名目実効レートとボラティリティー・インデックス(VIX指数)の相関をみると、足元で確かにやや弱まっているものの、現状程度まで相関が弱まっていた時期は過去にもある。
特に2014年後半や2016年中のように相関がほとんどない状態が長く続いていたこともあった。少なくとも、円全体としてはファンディング通貨としての機能が大きく変化したとは言えそうにない。

<リスクオフになっても円売り需要が根強い訳>

まず、円売りの主体が本邦企業・投資家だったためリスクオフ時の円買い戻し圧力が弱い。

前述の通り、リスクオフ時に円が買い戻されるのはポジションの巻き戻しである。この観点から考えると、リスクオン時の円売りの主体によって、リスクオフ時の円買いのセンシティビティー(感応度)が異なる可能性は十分に考えられる。

これまでも指摘してきたように、最近の円の弱さは、海外投資家による短期的・投機的な円売りよりも、国内投資家・企業による対外投資によるところが大きいとみられる。

特に、ここ数年間の特徴としては、本邦企業による対外直接投資の大きさが目立つ。

対外直接投資による円売りは、証券投資や短期的な円売りに比べて、リスクオフ下での円買い戻しにつながりにくい。
これが以前に比べて「リスクオフ=円買い戻し」という動きが小さくなっている要因の1つである可能性は考えられる。

第2に、リスクオフになっても根強い円売り需要がある。

1番目の要因は過去の円売り主体に関するものだが、現在の円売り主体も以前と大きくは変っていない可能性が高い。

特にアベノミクス開始以降の5年半の円売り主体として目立っているのは本邦企業(対外直接投資)だが、本邦企業による円売りは証券投資や短期的な取引と違い、リスクオフになっても円売りオーダーが引かないという特徴がある。

個々の案件で事情はやや異なるかもしれないが、海外企業の買収や海外への設備投資に絡む為替取引は、買収や投資が決定してから行われるのが通常であると考えられるため、その時々のニュースや株価下落などでセンチメントが悪化しても淡々と円売りが続けられる可能性がある。

<リスクオフ下で円がドルより買われる前提条件>

3つ目の背景的な要因としては、今回のリスクオフの発端が新興国市場に対する懸念であることや、米国経済独り勝ちによりドルが通常のリスクオフ時よりも強くなっている(ドル円相場で円高が進みにくい)可能性が考えられる。

実際、新興国通貨とドル名目実効為替レートの逆相関関係は継続的に非常に強くなっている。
円名目実効レートとの相関関係と比べても圧倒的に逆相関関係が強いことは、新興国市場に投資されている資金の出どころは圧倒的にドルが多い可能性を示唆している。

新興国市場に対する懸念の高まりによるリスクオフ状態は、他の要因によるリスクオフ状態に比べ、円よりもドルの買い戻しにつながる可能性が高いと言えそうだ。